老舗

帝国データバンクの調べによると、100年以上の老舗企業は、2019年現在、約3万3000社あると言われています。
100年以上の老舗企業のことを「長寿企業」と呼びます。
企業の平均寿命は一般的に30年と言われている中で、創業から100年以上も存続し続けることは容易ではありません。

なぜ日本には長寿企業が多いのでしょうか?
一言で表現すると「継続することが使命」を重要視しています。
継続するためにすることは何か?の観点で企業経営を行っています。

今回は、長寿企業に共通すると思われる特徴についてお伝えします。

投資と挑戦

いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくことを「不易流行」と言います。

「不易」:いつまでも変化しない本質的なもの:企業の存在意義(理念)
「流行」:新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと:環境に合わせて変化させる商品や業態などの変更

となります。

市場や顧客などの外的環境は常に変化し続けます。
存続のためには「変えるもの」と「変えないもの」を見極め、選択し続けていく必要があります。
見極めるための判断基準が「企業の存在意義(理念)」であり、選択し続けた結果、顧客との持続的な関係を築くことにつながり、長寿につながっていると考えられます。

「変えるもの」には投資と挑戦を行いますが、投機でも無謀でもなく、将来を見据えた投資と挑戦を行っています。

虎屋の例

「とらやの羊羹」として広くその名を知られているのが虎屋です。
創業は室町時代後期であり、約500年の歴史を持つ企業です。

「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」を理念としています。

味覚や趣向の変化に伴い「トラヤカフェ」を展開しています。
自由で新しいお菓子の世界の提案をコンセプトに「とらや」のあんを使ったスイーツを提供しています。

理念の明文化と継承

「投資と挑戦」で「いつまでも変化しない本質的なもの=企業の存在意義(理念)」をお伝えしました。

古くは「家訓・社是・社訓」という形で継承し、現在では「企業の存在意義(理念)」として継承し続けています。
「企業の存在意義(理念)」は、明文化して終わりではなく、徹底して企業内に浸透させています。

目先の利益に心を動かされず「企業の存在意義(理念)」に基づいて判断することを繰り返し行っています。

ウォーレン・バフェットの投資方法と似ています。

  • 理解できないことには手を出さない
  • 安全域を持つ

長寿企業にも危機がなく順風満帆であったとは言えません。
危機の度に「自分たちは何者か?」「自分たちの長所を生かすためには?」を問い続けを行っています。

社員を大切にしている

社員ひとりひとりを仲間・家族として捉え、その幸せを想う姿勢が根付いています。
特殊な何かを行っているわけではなく、徹底度が違います。

月桂冠の「Quality・Creativity・Humanity」

日本酒を中心に各種の酒類を製造する酒造会社である「月桂冠」。
1637年の創業から約400年存続の長寿企業です。

「月桂冠」の理念は「Quality・Creativity・Humanity」です。
3つのうち「Humanity」については「社員の一生を大切にする」として、「物故者法要」という行事で実践しています。
「五十回忌」まで行われている徹底度合いです。
今いる社員だけでなく、退職者はもちろん、亡くなった社員まで含めて自分たちの仲間として扱い続けているのです。

リスクに備える

100年以上存続している長寿企業ですが、世の中の激変がなかったわけではありません。
自然災害・戦争など、企業が直面する危機を経験しています。

「身の丈経営」「堅実経営」という言葉で表現できますが、常にリスクに備えて準備を怠らないことを行っています。

  • 目先の利益に飛びつかない
  • 自分たちができることに集中する
  • 理念から外れたことを行わない
  • 自分たちの強みを生かせない分野には手を出さない
  • 有事に備えて質素倹約

上記のことを徹底して行っています。


まだまだたくさんの特徴的な要因があると思います。
根底にあるのは「困ったら理念に立ち帰る」ことなのだと感じます。
企業で言う理念は個人では「志」。
ひとりひとりの独自性を活かす鍵は「志」にあるのだと思います。