「言祝ぎ(ことほぎ)」とは「言葉で祝うこと」を意味します。
言葉は現実化する力があるという「言霊(ことたま)」思想がありました。
美しい言葉を使い、美しいものを生み出す。
「言霊(ことたま)」思想により、和歌や物語が生まれ、日本文化を培ってきました。
また、絵画になったり、工芸品になったり、建物になったりして、先人たちは後世に「形」として遺しています。
「言」が「事」になると信じながら幸を招こうと、想いとともに言葉を口にする。
現代での「引き寄せの法則」となりますが「言葉で祝うこと」は相手がいなければ成立しません。
言葉に宿る霊力を「言霊(ことたま)」と言いますが、お正月にはいたるところで見聞きすることができます。
「言祝ぎ(ことほぎ)」の代表とも言えるのが、新年の「あけましておめでとうございます」という言葉です。
また、「正月飾り」や正月に食べる「おせち料理」、「正月の風習」などからも感じることができます。
「あけましておめでとうございます」とは、人間は大いなる自然に生かされているものであり、無事に年を越えられたことに対する感謝の心や新年1年を互いに生かし合う想いも示します。
想いを示しますので、心から祝うのが本意であり、言葉だけでは足りません。
新年を迎え、家族に「あけましておめでとうございます」。
地域の方に出会ったら「あけましておめでとうございます」。
離れて住む親戚などに電話や年賀状で「あけましておめでとうございます」。
「言祝ぎ(ことほぎ)」の奥にあるものは「つなぐ」ことであり、「時間」と「空間」の2つがあります。
時間をつなぐ
去年から今年へ、今年から来年へ。
祖先から現在へ、現在から次世代へ。
時間をつなぎ「中今」という「この瞬間に生き切る」ことを伝えています。
過去があって現在があり、現在が未来を築く。
人はいつか死にます。
「死を想え」そして「今を生きろ」という価値観を、想いとともに言葉に託して伝えているものと思います。
空間をつなぐ
「正月飾り」や正月に食べる「おせち料理」にも想いが込められています。
「松」は長寿や繁栄を象徴するイメージであり、言葉を想起させます。
また、年齢の数え方として「数え年」というものがありますが、生まれた時点の年齢を1歳とし、以後元日が来るごとに1歳を加算するというものです。
全員が元日に年をひとつ重ねるのが「数え年」です。
想いを仕組みという形にして遺す。
「末広がり」を示す「扇」にも想いを込めています。
同じ海で囲まれた場所で生き、山や草木、川や海に恩恵を受けて生きている私たちは自然の一部である。
「あなたは私、私はあなた」という共存共栄の想いを形にして伝えているのだと思います。
口から放たれた音としての言葉は目には見えません。
先人たちは、自然の摂理が人を動かすのと同じように、人同士をも動かす力となることに不思議な力(=霊力)を感じました。
自らを超える不思議な力を感じ、畏敬の念を抱き、大切に言葉を扱ってきた。
これらを「言霊(ことたま)」として、相手の存在を認め、自分の存在を認める価値観として今に遺しているのだと感じます。
現在まで、それぞれの想いによって愛され育てられ、現代に生きる私たち。
想いを伝え合うために先人たちが創り上げた言葉。
想いとともに次世代へキチンと継承したいものです。