仕事とは教えられて覚えるものではなく、上司や先輩を見て盗んで覚えるものだ。
背中を見て育て!
仕事は盗んで覚えるものだ。
このような考え方があります。
時代の変遷とともに、風潮も変化してきていますが、今回は奥にあるものをお伝えしたいと思います。
奥にあるものを伝えるためには「技能と技術の違い」を知っておく必要があります。
技能とは?
「技能」と「技術」、似ている言葉ではありますが意味を明確に区分けしている言葉でもあります。
「技術」を用いる能力を「技能」と呼んでいます。
- 技能:物を作る仕事などに関し、それを巧みにしてのけることができる腕前。
- 技術:物事を取り扱ったり処理したりする際の方法や手段。
「技能」は「経験的に身に付くもの」を示します。
また、経験で築き上げたものであり「人に宿るもの」でもあります。
よって「体で覚えたものは誰も奪えない」と言ったりします。
基本的に、その人が死んでしまうと技能は消えてしまいます。
後継者がいて、伝承することができれば継承することはできますが、後継者の経験で築き上げていくものであり、全く同じ技能であることはありません。
例えば「寿司職人」で考えてみましょう。
- どれくらいのご飯(シャリ)を手に取るか?
- どれくらいの強さで握るか?
- どれくらいのワサビを乗せるか?
- どれくらいの大きさのネタを乗せるか?
目の前の食べる人のことも観察し、今日の天気や気温、湿度、食べる人の体調や好みを感覚で察知して寿司を握ります。
経験で築き上げますので、全身全霊を傾けて工夫を凝らします。
ビデオカメラで録画しても、微細な感覚までは理解できません。
録画したデータで見ることができるのは、やっているところとやった結果でしかありません。
おそらく、録画データを真似しても同じ結果は出せないはずです。
技術とは?
「技能」のセクションでお伝えした次の内容は「レシピ」にして標準化することは可能です。
「レシピ」にして標準化した結果「技術」となります。
- どれくらいのご飯(シャリ)を手に取るか?
- どれくらいの強さで握るか?
- どれくらいのワサビを乗せるか?
- どれくらいの大きさのネタを乗せるか?
技術は知識とも言えます。
技術は記録し残すことも可能ですので、その人には関係なく「レシピ本」「レシピ動画」として多くの人に伝達することは可能です。
大切なこと
技能と技術、どちらが良いか?ということではありません。
「技能」の場合、長い年月をかけて積み上げていくものであり、単に技術を習得するだけではなく「伝承」されるものですので「伝承されるための人としてのあり方」も必要となります。
体験や経験を通して学ばないと習得できないことから「修行をして掴む」ということも必要になります。
また、最善を尽くすために「こだわり」が生じます。
素材へのこだわり、道具へのこだわり、手順へのこだわりなどです。
残念ながら「匠の技」で伝承が途切れてしまったものもたくさんあります。
どんな想いで伝承しようとしているのか?
どんな想いで残そうとしているのか?
感じてみることも大切なのだと思います。