法隆寺(ほうりゅうじ)は、奈良県生駒郡斑鳩町にある仏教寺院で西暦607年の創建と言われています。
古代寺院の姿を現在に伝える日本最古の木造建築物群であり、聖徳太子ゆかりの寺院でもあります。
1993年に「法隆寺地域の仏教建造物」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。
また、建造物以外にも、飛鳥・奈良時代の仏像、仏教工芸品など多数の文化財を有しています。
法隆寺は、古代の職人の知恵と技術が今も脈々と生きています。
ここでは、そのような観点からお伝えします。
地震の多い日本での災害に耐える力
地震の多い日本。
現代建築ではよく耐震構造という言葉が使われていますが、法隆寺は今とは異なる「耐震技術」をふんだんに使っています。
- 中心に「心柱(しんばしら)」がある
- 五重塔の各重(一~五重)がゆるくつながっているだけ
上記のとおり、地震の振動が伝わるとその波に乗るように建物が動く仕組みになっています。
ゆらゆら動き、地震の力が抜けると、また元通りにじっとおさまります。
自ら揺れることで地震による倒壊を防ぐ技術を使っているのです。
雨や湿気を避ける
法隆寺は軒を深くしています。
軒を深くすることで、建物自体に雨が当たることを防いでいます。
また、屋根に平瓦を並べ、瓦と瓦をつなぐジョイントの上に丸瓦を並べることで、上の屋根から雨が落ちても痛まない工夫がなされています。
先人からの「口伝」
法隆寺の大工には、代々伝わってきた「口伝」があります。
その一部を紹介します。
樹齢1000年の檜を使ったら、1000年持つ建物を造れ
日本の古代建築は、檜無くしてはありません。
法隆寺の檜は、削るといまだに香りがし、瓦を外せば軒が反り上がるとのこと。
檜の強さを知り、使い方を知る先人たちがいた、ということになります。
四神相応(しじんそうおう)の地を選べ
四神相応とは、東西南北を司る四神に対応した地形をもつ場所が最も優れた地相を持っているとする考え方で、法隆寺もこの考え方に沿って場所が選定されています。
東:青竜:東に清い流れ
南:朱雀:南に沼や沢があり低くなっている
西:白虎:西に大きな道
北:玄武:北に小高い山を背負っている
用材は木を買わず山を買え
木の材質は山の土質で決まり、木の癖は山の環境から生まれるとの考え方です。
南は日当たりが良く生育が活発ですが、北は南の真逆です。
木の一本一本より山を見て、用材の使い方を決めています。
木組みは寸法で組まず木の癖を組め
「心柱」を囲む部分が、瓦の重さや壁の重さがかかり、長い間には低くなってしまいます。
300年後ぐらいにちょうどよく落ち着くように木の癖を読み、心柱の木をあらかじめ切り縮めてあります。
未来の子孫に、美しい形を遺す。
そんな想いで創られているのです。
歴史的建造物の背景にある想いも一緒に観ることで、より一層理解が深まります。